ネットワークスライシングとは?最新技術が求められる背景や活用事例も紹介

ネットワークスライシングとは スマートホーム

次世代通信規格の5Gをはじめとしてネットワークの高速化が進んできていますが、同時にネットワークに接続されるデバイス数も増加している現状があります。

それにともない、従来のネットワークでは想定されていなかったような課題や問題も生じており、さまざまな対策が講じられています。なかでも現在注目されているのが、ネットワークスライシングとよばれる技術。ネットワークに関する専門的な技術のため、初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、ネットワークスライシングとはどのような技術なのか、なぜネットワークスライシングが必要とされているのかも含めて詳しく解説していきます。

ネットワークスライシングとは?

ネットワークスライシングの基本情報

ネットワークスライシングとは、一言で表すと「ネットワークを仮想的に分割したように運用する技術」のことを指します。たとえば同じネットワークに接続するデバイスのなかでも、スマートフォンで動画を見る場合とパソコンでWebサイトを閲覧する場合とでは求められるネットワーク速度も異なります。

そこで、ネットワークのなかでも高速大容量のものと低速のものに仮想的に分割することによって、ネットワークの限られたリソースを効率的に活用することができます。

このように、大元のネットワーク回線をスライスしたように分割するための技術のため、ネットワークスライシングとよばれています。

ネットワークスライシングが必要な理由

ネットワークスライシングが必要な理由

ネットワークスライシングが必要性を増してきた背景には、ネットワークの高速化によってニーズが多様化し、さまざまなデバイスが登場してきたことが挙げられます。これまでインターネットといえばパソコンで利用するのが一般的でしたが、スマートフォンが登場して以降、さまざまなデバイスがネットワークに接続されるようになりました。

なかでも特徴的なのがIoTの存在です。年々インターネット上に流れるコンテンツは大容量化し、現在ではHD画質での動画ストリーミング配信も珍しくなくなりましたが、そのようなニーズとは真逆の小容量のデータ通信がIoTではメインとなっています。たとえば温度や湿度などのデータは数キロバイトにも満たないもの。しかし、AIを活用するためにはIoTのようなデバイスで収集されたビッグデータが必要不可欠であり、その収集手段としてIoTが注目されています。

もしネットワークスライシングの技術がないまま従来のネットワーク上でIoTなどの大量のデバイスを接続した場合、極めて非効率的なリソース配分となってしまうでしょう。その結果、ネットワークは混雑し十分な通信速度が確保できなくなったり、そもそもネットワークに接続できないデバイスも出てくるかもしれません。

ネットワークスライシングは大量のデバイスを接続し、大容量、低遅延な次世代ネットワークを構築するために必要不可欠な技術であるといえるのです。

ネットワークスライシングで実現できること

ネットワークスライシングで実現できること
ネットワークスライシングはIoTなどの技術と関連性が深いことは分かりましたが、実際にどのようなことが実現できるようになるのでしょうか。今回は代表的な3つの事例について詳しく解説します。

自動運転技術

IoTやAIによる代表的な活用事例といえば自動運転技術が挙げられます。自動運転の基本的な仕組みは、走行中の映像やさまざまなデータを管制センターに送信し、状況に応じてAIが判断し操作信号をやり取りするというもの。いわば自動車そのものが巨大な通信デバイスのような役割を果たすものと考えて良いでしょう。

しかし、自動運転でやり取りする情報のなかには運転席から映し出されたモニター映像や、エンジンの回転数や速度、その他さまざまなものがあります。当然のことながら映像データと速度や回転数といったデータごとに必要とされるネットワーク要件は異なるため、ネットワークスライシングによって最適化する必要があります。

また、自動運転技術は数あるIoTの用途のなかでもシビアな低遅延の特性が求められるもの。仮に通信に0.1秒単位の遅延が生じてしまうと、自動車のブレーキを踏むタイミングがずれて大事故につながるおそれもあるためです。俊敏でレスポンスの高い通信を実現するためにも、ネットワークスライシングは欠かせない技術といえるでしょう。

スマート農業

遠隔地からも作物の状況を随時確認でき、天候や生育状況を見極め科学的な管理を実現するのがスマート農業です。超高精細なカメラによって撮影された映像をもとに生育状況を把握し、同時に気温や湿度、日照時間などさまざまな気象データも収集します。また、田畑を荒らす害獣などを検知するためにもリアルタイムでの映像配信が不可欠であり、それらを実現するためにはネットワークスライシングが欠かせません。
スマート農業は効率的な農作業の実現に貢献できるだけではなく、次世代への技術継承にもつながると期待されているのです。

スマートファクトリー

第二次産業における代表的な活用事例が、スマートファクトリーとよばれるものです。これは工場などの生産現場において、生産機器の故障予測や効率的な人員配置を可能にするもの。もともと生産現場では機械化が進み高い生産性を実現できていますが、工程管理や生産機器のメンテナンスなどに多くの人員が割かれている現状があります。従来、生産機器のメンテナンスは長年にわたって担ってきた職人を中心に、経験や勘に頼ってきた部分が多いもの。そのような属人的な作業を可視化するために、IoTによるさまざまなセンシングデバイスを活用したスマートファクトリー化が検討されています。

業種や職種を問わず多くの産業でIT化が加速

今回紹介してきた事例を見ても分かる通り、ネットワークスライシングをはじめとしたIT技術は1次産業、2次産業など幅広い業種に活用されていくと予想されます。これまでIT技術とは無縁と思われてきた業種こそ、IoTやAI、そして5Gを活用した革新が加速度的に進んでいくことでしょう。そのためにも、今回ピックアップしたネットワークスライシングは欠かせない技術といえるのです。