小規模事業者がIoTを活用するためのコツ

小規模事業者がIoTを活用するためのコツ 5G・IoT

働き方改革やDXの推進によって、多くの企業がIoTをはじめとした最先端のテクノロジーを導入し始めています。しかし、さまざまな事情によって実現できていない企業も少なくありません。

そこで今回の記事では、中小企業がIoTを導入する際に起こりがちな問題とその解決策について詳しく解説していきます。働き方改革を実現させたいと考えている経営者はもちろん、DXによって生産性を向上させたい企業にとっても有益な情報であるため、ぜひ最後までお読みいただき参考にしてみてください。

IoTを導入する際に起こりがちな問題

IoTを導入する際に起こりがちな問題
IoTの導入が進まない背景には、さまざまな問題が考えられます。特に事業規模の小さい中小企業や、これまでITとは無縁であった業種ほど影響は強い傾向にあります。なかでも典型的な事例として考えられる問題を5つ紹介します。

ノウハウや知識がない

IoTという言葉は耳にしたことがあっても、実際にどのような業務に活かせるのか分からず、実現に至らないケースがあります。また、活用のアイデアがあったとしても、それを開発できるほどのノウハウが自社にはなく、計画が思うように進まないことも。

大企業であれば社内に情報システム部門などがあり、ITに詳しい人材がいるため検討しやすいですが、特に非IT分野の中小企業には専門的なスキルをもった人材がおらず、実現が難しいケースが多いのです。

コストがかかる

ノウハウや人材の問題と並んで多いのが、コストの問題です。これはIoTに限らずIT分野全般に言えることですが、たとえば自社の業務に最適化されたシステムを一から構築しようと考えると、少なくとも数百万、数千万円単位のコストがかかってしまいます。

大規模なシステムになると億単位のコストがかかることも珍しくなく、コストに見合うだけの効果が得られるかが不透明となり計画が頓挫してしまうケースがあります。

業務フローの変化

IoTシステムを業務に活用しようと考えたとき、少なくともこれまで実施してきた業務フローや仕組みを変更しなければなりません。特に長年にわたって同じ業務フローを継続してきた従業員にとっては、「自分の仕事がなくなるのではないか」「やり方が変わってミスが起こるのではないか」と不安になり、現場からの抵抗を受けることもあります。

また、新しい業務フローを覚えるのに時間を要してしまい、想定以上に時間がかかってシステムの導入効果が想定よりも上がらないケースも少なくありません。

セキュリティの担保

IoTはネットワークに接続されるモノやセンサーが多数存在するため、業務効率化に役立つ一方で不正アクセスやサイバー攻撃の対象になる可能性があります。そのため、IoTシステムを構築するうえで万全のセキュリティ対策は不可欠であり、これを実現するためには極めて専門的な知識やスキルが要求されます。

しかし、当然のことながらIoT構築のノウハウがない企業にとっては、セキュリティ対策へのハードルも極めて高いもの。せっかく高い効果が見込めるアイデアやシステムができても、セキュリティ対策の甘さを指摘され計画が頓挫してしまうこともあるのです。

不正アクセスによって企業の機密情報や顧客情報が漏洩してしまうと、企業の信頼性をも揺るがしかねない重大な事件に発展するため、セキュリティ対策は慎重に慎重を重ねて検討する必要があります。

収集したデータの活用

IoTの主な目的は機械や設備を制御したり、センサーデバイスによって膨大なデータを効率的に収集することです。しかし、せっかく収集したデータも活用しなければ意味がありません。たとえば店舗にAIカメラを設置し、来店客の属性を自動的に集計しながらマーケティングに活かす方法もあります。

このとき、調査する時間帯や期間の決め方、得られた結果が何を意味しているのかなどを判定するためには、統計学をはじめとした専門的なスキルが要求されます。

中小企業がIoTを活用するためには

中小企業がIoTを活用するためには
IoTの導入にはさまざまな課題があることが分かりましたが、これらをクリアするためにはどのような対策が考えられるのでしょうか。5つのポイントを中心に解説します。

導入目的を明確にする

まずはIoTによってどのような課題を解決したいのか、導入目的を明確にしておきましょう。自社が抱える経営課題や業務課題をピックアップすることから始めますが、どんな小さなことでも良いのでとにかくピックアップしていきましょう。また、同時にIoTの基本的な特性や仕様についても従業員に知ってもらい、業務課題とIoTを組み合わせた解決方法のアイデアを検討します。

技術的に可能であるか、予算的に可能であるかなど、さまざまな懸念材料も出てくると思います。しかし、まずは多くのアイデアをピックアップし、その中から優先度の高いものを抽出して導入目的を明確化していきましょう。

既存システムとの連携を考える

業務フローの変更や従業員の工数に与える影響を最小限に留めるためにも、すでに利用している既存システムと連携できる部分がないかを検討してみましょう。たとえば営業支援システムにマーケティングデータを連携する場合、所定のフォーマットに合わせるなどの対策が必要になることもあります。

プラットフォームやパッケージサービスを活用

IT関連のシステムを導入する場合、業務内容に合わせて一からシステムを個別に開発しようと考えがちです。しかし、当然のことながら個別開発となると膨大なコストが発生し、中小企業にとっては大きな負担となります。そこで、すでにパッケージとして提供されているサービスやプラットフォームを活用できないか検討してみることが重要です。

多くの企業がIoTの導入を検討していることもあり、業種に応じてさまざまなユースケースも増えてきています。たとえば、大手通信キャリアを中心に、多少のカスタマイズを加えるだけで簡単に導入できるパッケージシステムも続々と登場しています。

「IT導入補助金」を活用する

働き方改革やDX推進のため、政府では「IT導入補助金」を展開しています。これは中小企業を対象に、IoTをはじめとしたITインフラやシステムを導入する際に一定額の補助金を支援する制度です。対象となる中小企業の定義も業種によって変わるため、以下のWebサイトで確認してみてください。
IT導入補助金2020

スモールスタートを心がける

IoTのような先進的なシステムを導入する場合、もっとも重要な考え方が「スモールスタート」です。働き方改革やDXと聞くと、全社一斉に取り組まなければ意味がないと考えがちですが、ITのシステムをいきなり全社に展開することは極めてリスクが高いものです。そこで、まずは限られた部署や業務の範囲内で試験的にスタートさせてみて、成果を得られたら徐々に範囲を拡大していきます。

導入目的の部分で「どんな小さな業務課題でもピックアップする」と紹介したのは、スモールスタートに役立てられる事例をピックアップするためでもあるのです。

他社の導入事例も参考にしながらIoTの導入を検討

他社の導入事例も参考にしながらIoTの導入を検討

IoTの導入にあたっては、自社のノウハウや知識だけではアイデアが浮かばないことも少なくありません。そのような場合は、他社でどのような取り組みを行っているのか、具体的な事例を参考にしてみるのもおすすめです。

IoTに取り組む企業は徐々に増えており、さまざまな導入事例を公開している開発ベンダーもあります。自社で導入してみたいアイデアや事例があれば、その情報を公開している開発ベンダーに予算も含めて相談してみるのもおすすめです。