M2Mとは?IoTとの違いや活用事例も紹介

M2Mとは?

次世代を支える革新的な技術として注目されているIoT。実はこれに似た技術として、M2Mというものがあることをご存知でしょうか。M2MはIoTという概念が生まれる前から存在しており、私たちの生活を支えるうえで必要不可欠な技術でもあります。

今回の記事では、M2Mとは何なのか、その基本的な概要を紹介するとともに、誤解されがちなIoTとの違いや実際に活用されている事例などもあわせてご紹介していきます。

M2Mとは

M2Mとは
M2Mとはモノ同士をネットワークで接続し、何かを動かしたり制御したりするための技術です。「Maschine to Maschine」という言葉を略してM2Mとよばれています。M2Mには人間の手が介在することがなく、機械同士で完結することができます。そのため、M2Mは生産機器の自動化や効率化に大きく貢献する技術として注目されています。

総務省の調査によると、M2Mが本格的に普及しだすと世界では400億以上のデバイスがインターネットに接続される時代がやってくるとされています。自動車や医療、通信デバイスまでその用途は多様で、今後あらゆる用途に応用されていくことでしょう。スマートフォンの登場によって本格的なモバイルインターネットの時代が到来したように、M2Mの普及によってこれまでとは比べ物にならないくらいの大きな変革が起こると期待されています。

ちなみに、機械同士の通信であるM2Mの対極にあるのが人間同士の通信です。すなわち「Human to Human」、H2Hとよばれるものです。これまでは人間同士がコミュニケーションをしたり、人間が機械に司令を出して制御をすることが一般的でした。
人間対機械の通信はM2HやH2Mとよばれます。

M2Mの通信に使われるのは従来の有線ネットワークはもちろん、無線ネットワークであるWi-Fiや3G、4G、さらには5Gなど、あらゆる通信媒体が含まれます。

M2MとIoTの違い

IoT
M2Mを語るうえで誤解しがちなのが、IoTとの関連性です。どちらもさまざまなモノがネットワークに接続されるという意味では似た技術なのですが、M2MとIoTでは大きく異なるポイントがあります。それは「データの収集」です。

M2Mの大きな役割は機械同士をネットワークで接続して制御することです。一方でIoTはさまざまなセンサー、カメラなどの機器からデータを収集し分析することが主な役割となります。そのため、IoTは単体で何かの役割を果たすというものではなく、AIなどさまざまなテクノロジーと併用することによって初めてその力を発揮することになります。

場合によってはIoTによって収集したビッグデータを活用し、AIがそれを分析、M2Mの技術によってさまざまなシステムを自動化するという方法も考えられるでしょう。人間が判断をして機械を操作したり制御したりするよりも、IoTやM2Mの技術を応用することによって瞬時に実行できるようになります。

M2Mのパターン

M2Mは基本的にセンサーと駆動用機器のアクチュエータとよばれるもので構成されます。アクチュエータはさまざまな機器を制御する役割も果たし、主にセンサーから取得した計測データと、機器を制御する制御データをやり取りしています。M2Mの構成パターンは多様で、計測データを受け取るためだけにアクチュエータが利用されることもあれば、制御専用、または計測データを受け取りつつ制御も司る役割を果たすものまでさまざまです。

M2M用のセンサー機器として代表的なものを挙げるとすれば、温度や湿度、照度、CO2センサーなどがあります。たとえば温度センサーを活用したM2Mのシステムとしては、農業を効率化するための温度管理が挙げられます。この温度になったら自動的に暖房を止める、またはビニールハウス内の換気を行うなど、従来人の手によって行われていたこまめな管理がM2Mによって可能になります。

M2Mが活用されている事例

M2Mが活用されている事例
実際にM2Mが活用されている事例をいくつか見ていきましょう。今回はM2Mの活用事例のなかでも代表的な4つのケースをご紹介します。

自動運転

大手自動車メーカーがこぞって開発競争を繰り広げている自動運転システムは、M2MやIoTのもっとも代表的な事例として有名です。
自動運転の基本的な仕組みは自動車に搭載された複数のカメラやセンサーでデータを収集し、AIが判断して自動車を制御するというものです。フロントガラスから見た道路や対向車の状況、さらには自動車の両サイドや後方の映像などを取得し、状況に応じてAIが自動車の運転を制御します。

このなかでM2Mがその役割を果たすのはカメラや各種センサー、そして自動車を制御する部分であり、データを収集してAIに判断させる部分はIoTの技術が担います。このように人間の手を介在することなく完全自動運転を実現するためには、M2MとIoTの技術が欠かせません。

スマートグリッド

スマートグリッドとは次世代送電網ともよばれ、電力を効率的に供給するために需要と供給のバランスを最適化する仕組みを指します。

安定的な電力供給を実現するためには、需要に対して供給量が多くても少なくてもいけません。そのため電力会社は常に正確な電力の需要予測を行い、需要に対して適切な供給量が維持できるように調整しています。スマートグリッドは一定のエリアの送電網内に専用の端末が組み込まれるほか、各家庭にはスマートメーターとよばれる計測機器が設置され、当該エリア内での電力供給量をリアルタイムに把握し最適化を行います。

たとえば再生可能エネルギーや大規模な蓄電池、ハイブリッド車などを併用することで、発電所からの給電を最小限に留めることもできます。必要な電力はできる限り当該エリア内で賄い、不足している分については発電所から送電してもらうことによってエネルギー効率は高くなります。いわば電力の地産地消のような考え方であり、次世代の省エネ対策としても注目されています。

スマートグリッドよりもさらに大きな規模で検討されているスマートシティという構想もあり、日本国内では千葉県柏市や神奈川県横浜市などで実際に展開されている事例もあります。スマートメーターや送電網内に設置する専用端末がM2Mの中心的な役割を果たします。

スマート農業

M2Mのパターンでも紹介した農作物の温度管理もスマート農業に代表されるものです。スマート農業はビニールハウスの気温や照度管理以外にも稲作の水温管理などにも活用されます。気温や照度、天候などの情報を収集し、作物ごとに最適な生育条件になるよう制御。こまめに田畑やビニールハウスを見回る必要がなくなり、ほかの作業に時間を有効活用できます。

田畑の状況を確認したい場合はスマートフォンからいつでもリアルタイムで情報を閲覧したり、一定の条件になったらメールやチャットでアラートを飛ばすようなシステムも構築できます。ちなみにこれらのデータは日々蓄積されていくため、農業経営に関するノウハウを後世に継承する際にも役立ちます。これまで長年の経験や勘に頼ってきた農業から、科学的なデータを根拠にした農業に移行していきます。もちろん、農業にかかわるすべてのノウハウがデータ化されるというものではありません。農家の経験や勘に頼らざるを得ない部分も多いですが、少しでも農作業を効率化するという意味でスマート農業の導入が期待されています。

監視カメラ

監視カメラに映った映像から不審者を検知し、アラートを発報するシステムにもM2Mの技術が応用されます。これはAIの技術も応用することで精度が向上し、性別や年齢、身長なども割り出すことができるようになります。警備員の配置を最適化し効率を高めるためにも、M2MやIoTの技術は欠かせないものになっています。

加えて、固定の監視カメラだけではなくドローンも活用すると、逃走する犯人をドローンで追跡するようなシステムも構築でき、大手通信キャリアでは実際にこのようなシステムの実証実験も始まっています。