パソコンを選ぶ際にGPUの性能を重視する人も多いのではないでしょうか。特にグラフィック処理や3D処理、CADなどを日常的に使用する人にとっては欠かせない項目といえるでしょう。
実は現在、このGPUがさまざまな分野において注目されていることをご存知でしょうか。今回の記事では、そもそもGPUとは何なのか基本的な内容を紹介するとともに、注目されている理由についても詳しく解説していきます。
目次
GPUとは
GPUは「Graphics Processing Unit」の略称で、その名の通りグラフィック処理や3D映像などの処理に特化したプロセッサです。
別名「グラフィックボード」や「ビデオカード」とよばれることも多く、自作パソコンを組み立てる人にとってはこちらのほうが聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか。しかし、厳密にいえばグラフィックボードやビデオカードとはプロセッサやインターフェースなどが一体化したパソコンパーツのことを指し、GPUはプロセッサのみを指すことで区別されています。そのため、本来GPUとグラフィックボードやビデオカードは別のものを指すということになります。
本来、GPUがなくてもパソコンはグラフィック処理を行うこともできるのですが、パソコンに搭載されているCPUやメモリだけでは処理しきれず膨大な時間を要してしまうことも少なくありません。そこで、グラフィック処理や3D映像などの編集の際にはGPUの力を借りて行っているのです。
最近ではGPUにグラフィック処理以外のさまざまなタスクを実行させるケースも増えてきており、年を追うごとに性能がアップし需要が急増しています。
CPUとの特性の違い
GPUもCPUも同じプロセッサであり、データを処理するという意味では同じ役割を果たしています。人間に例えるとすれば頭脳にあたる部分といっても良いでしょう。しかし、実はGPUとCPUは同じチップであっても、それぞれ特性が異なります。
GPUは定型的な処理を大量に行うことを得意としており、CPUは非定型的な複雑な処理を行うことを得意としています。
数学の問題を解く場合を例に挙げるとすれば、問題を見てどの公式を使用すべきなのかを考えるのがCPUであり、公式に当てはめて速いスピードで計算を解いていくのがGPUであると考えると分かりやすいのではないでしょうか。
GPUとCPUを比較したとき、プロセッサに搭載されているコア数は圧倒的にGPUのほうが上です。そのため、単純に考えるとGPUに置き換えたほうが圧倒的にコンピュータの性能は上がるのではないかと考えてしまいがちですが、実際は上記のようにそれぞれ特性が異なるため、仮にGPUに置き換えてしまうと正常にコンピュータが動作しなくなってしまうのです。
このようにGPUが搭載されているパソコンは、コンピュータ内で得意分野を分担して作業を効率化していると考えることができます。
GPUが注目されている理由
GPUは定型的かつ大量の処理を行う作業に適していることが分かりましたが、そもそもなぜ近年になってGPUのニーズが高まってきているのでしょうか。そこにはいくつかの理由があるのですが、今回は大きく3つのポイントに分けて解説します。
映像コンテンツの爆発的増加
1つ目の理由として考えられるのが、映像コンテンツの爆発的な増加にともなうものです。YouTubeをはじめとしてさまざまな映像コンテンツが誰にでも制作・投稿できるようになり、表現の幅が一気に拡大してきました。スマートフォンやタブレット端末が広く普及したことにより、誰もが手軽にインターネットにアクセスでき、それにともなって動画コンテンツの需要が急拡大した背景があります。
凝った編集や長時間の動画を撮影するとなると、当然のことながら編集にかかる負荷や時間も倍増します。単にスマホのカメラで撮影した動画と、テロップやSEなどの編集が加えられた見やすい動画を比べると、多くのユーザーは後者を支持することは明白です。
その結果、パソコンで動画編集を行うクリエイターも増加し、必然的にGPUのニーズも拡大していったのです。また、これまで視聴者であったユーザーも、動画クリエイターに挑戦するため新規参入が活発化したことも大きな要因のひとつといえるでしょう。
仮想通貨マイニングの需要増加
2つ目の理由として考えられるのは、仮想通貨のマイニング需要の増加です。マイニングとは日本語で「採掘」を意味し、仮想通貨を売買するのではなく報酬として採掘することをいいます。
ビットコインをはじめとした仮想通貨の多くは、ブロックチェーンとよばれる技術を採用しています。これは中央集権的な特定の管理者が不在で、P2Pネットワークによって構築されたユーザー同士が互いに管理する仕組みのもの。
ブロックチェーンでは一定の時間ごとにユーザーの取引データなどの記録を残しておく必要があるのですが、正確なデータを記録するためには膨大なコンピュータのリソースが必要になります。そこで、ブロックチェーンでは特定のサーバやクライアントPCに処理を集中させるのではなく、ユーザーのPCリソースを借りて膨大な計算を行っていきます。このとき、PCのリソースを借りた報酬として仮想通貨を得ることができ、このことをマイニングと呼んでいるのです。
仮想通貨の取引量増大とともにマイニング需要も高まり、現在では超高性能なGPUをいくつも搭載したマシンで大規模にマイニングに参加する事業者も増えています。特に取引量の多いビットコインでは、個人のPCではマイニングに成功することは難しく、GPUをいくつも実装し大規模なシステムを組まなければ報酬を得られないとされているのです。
ディープラーニングを活用した研究開発
AIの代名詞的な存在ともいえるディープラーニングの研究開発にもGPUが必要とされます。
ディープラーニングとは日本語で深層学習ともよばれ、膨大な学習データをもとにコンピュータが自ら学習していく仕組みのこと。
たとえば大量の画像の中から「うさぎ」の画像を抽出するシステムを実現する場合は、事前に何千枚、何万枚ものうさぎの画像をコンピュータへ取り込み、何パターンものうさぎを学習させます。コンピュータはうさぎの特徴や傾向を割り出し、それに合致するものをランダムな画像の中から抽出していきます。ディープラーニングはこのような画像認識以外にも、音声認識や自然言語処理などさまざまな用途に活用でき、いずれも基本となるのは上記のような大量の学習データ群となります。
ディープラーニングはさまざまな企業にも活用が拡大しており、AIを用いた革新的なサービスや商品開発においては欠かせない技術といえます。このように膨大なデータを取り込み、瞬時に傾向や特徴を判断するためにはGPUが必要不可欠であり、急速に需要が拡大しているのです。
革新的な技術を支えるGPU
GPUはここ数年の間に登場したような新しい技術ではなく、パソコンが普及しだした2000年代頃にはすでに存在していたものです。しかし、近年になって急速にチップの性能がアップし、同時にグラフィック処理やマイニング、ディープラーニングなどの需要が拡大したことによって大いに注目されるようになりました。
今後、5GやIoTなどの先進的な技術が本格的に活用されるようになると、GPUの価値や需要もさらに拡大していくと考えられています。