IoT技術の意外な活用方法?熱中症対策として注目されるウェアラブル端末

IoT技術の意外な活用方法?熱中症対策として注目されるウェアラブル端末 5G・IoT

2010年代に入り、毎年のように猛暑日が続くようになりました。2000年代以前と比較してみても、明らかに夏の平均気温は上昇しており、熱中症へのリスクは年々高まってきています。熱中症は新たな時代の社会課題でもあり、さまざまな企業や自治体などが熱中症対策の知恵やアイデアを検討し始めています。

そんな中、現在注目されているのが最新のIoTテクノロジーを活用した熱中症対策の事例です。今回はIoTの熱中症対策について詳しく解説していきます。

熱中症対策は重要な社会課題

熱中症対策は重要な社会課題
総務省消防庁の統計データによると、2010年代に入って明らかに熱中症で搬送される患者は増加しており、毎年4〜6万人程度の患者が救急搬送されています。2000年代は1〜2万人程度であったことを考えると、爆発的に増加していることが分かります。

このような状況のなかで、特に危険視されているのが屋外で働く労働者。特に社会課題として認識すべき事例をいくつかご紹介します。

建設・土木作業員

ビルや家屋の建設に従事する作業員や、配管や通信ネットワーク、電力網の工事やメンテナンスに従事する作業員などは長時間にわたって屋外での活動を強いられます。これらの職業は私たちの生活を支えるライフラインを担っており、業務が滞ってしまうと多くの国民に影響が出てくるのです。

しかし、気温35度を超える猛暑の中で長時間にわたって屋外の作業を行うことはまさに命がけであり、少しでも健康リスクのある作業員や高齢の作業員に対しては十分な配慮が必要です。

物流配送員

建設や土木に従事する作業員に加えて、私たちのライフラインを支えるうえで重要なのが物流を担う配送員やトラックの運転手です。物流業界はEC需要の爆発的な増加によって逼迫している状況にあり、深刻な人手不足が続いています。

ユーザーからの時間指定や再配達にかかる人件費も増大し、限られた人員のなかで物流を支えている現状があるのです。必然的に作業員一人あたりにのしかかる負担も増大し、1日に何十軒もの家を回って配達するために常に時間に追われています。

トラックでの移動とはいえ、マンションやアパートの階段の上り下りなども含めると相当な運動量になります。十分な休憩や水分補給のための時間を確保しないと、作業員は熱中症のリスクが高まり、物流が崩壊してしまう危険性もあるのです。

熱中症に陥りがちな環境

熱中症に陥りがちな環境
建設・土木作業員や物流配送員といった職種以外にも、熱中症のリスクは十分考えられます。どのような環境下において熱中症のリスクが高まるのか、いくつかのポイントをピックアップしてみました。

頻繁に休憩がとりづらい

仕事に忙殺されていると、休憩時間の確保が難しく水分補給が後回しなってしまいがちです。熱中症を防ぐためには、こまめな水分補給や塩分補給が必要不可欠。時間や納期に追われていて休憩時間を惜しんで働いていると、気づかないうちに熱中症にかかっていることもあります。

特に屋外の猛暑のなかで働く作業員については、何よりも体調管理に注意する必要があり、管理者は納期や作業の進捗よりも最優先で気を配らなければなりません。

体温調節がしづらい服装

特に現場作業を担う作業員は、安全対策のために長袖の作業着の着用が求められることが多いです。しかし、当然のことながら肌の露出が少ないと体内に熱がこもってしまい、熱中症にかかるリスクが増大します。

高齢者のなかには体温調節の機能がうまくいかないケースも多く、気づいたときには深刻な熱中症にかかり命の危険にさらされることもあります。本人でさえも倒れるまで熱中症の症状に気づかないケースも多く、特に真夏の作業においては服装選びが極めて重要です。

熱中症対策に有効なウェアラブル端末

熱中症対策に有効なウェアラブル端末
作業員によっては自覚症状がなく、突然熱中症に見舞われることもあるため、管理者としては極めて難しい判断を要求されます。しかし、このような潜在的なリスクを可視化し、熱中症を未然に防ぐために注目されているのが、IoT技術を活用したウェアラブル端末です。

具体的にどのような機能が提供されるのか、特徴的なポイントをご紹介しましょう。

体温・脈拍・位置情報を計測

ウェアラブル端末といってもさまざまなタイプのものが存在しますが、もっとも多いのが腕時計のように装着してヘルスケアデータを取得するデバイスです。

そもそも熱中症と一口にいっても、現れる症状は異なり、体温が急速に上昇するケースもあれば反対に体温が低下するケースもあります。また、血圧や脈拍にも影響を及ぼすことが多いため、これらの基礎的なデータをつねに把握しておく必要があるのです。

ウェアラブルデバイスを装着しておけば、作業員の体温や脈拍などを計測し、リアルタイムでクラウド上にデータが共有されます。また、位置情報も同時に取得することによって、大規模な工事現場においても健康状態に異変をきたした作業員を瞬時に把握できます。

熱中症のリスクが高まったときにアラート発出

IoTのウェアラブル端末を装着しておけば、万が一作業員に健康上の異変が起こっても瞬時にアラートを発出し、適切なケアができるようになります。

すべての作業員が自身の体調の異変に気付けないからこそ、管理者は本人とのコミュニケーションだけではなく、科学的なデータをもとに判断する必要があります。医療の知識がない場合でも、一定の条件のもとでアラートが発出された場合は休憩を取らせたり、医療機関で診察を受けるなどのガイドラインを決めておけば安全な作業が実現できます。

屋内での作業でも油断は禁物

熱中症と聞くと屋外での作業にばかり注目されがちですが、実は屋内でも危険性が高いことが報告されています。たとえば工場で働く作業員や飲食店の厨房内など、熱がこもりやすい環境という面では極めて危険性が高い場所です。

屋内だからといって油断することなく、休憩と水分補給をこまめにとりながら、必要に応じてウェアラブル端末などを活用して管理することも求められるでしょう。

ただし「ウェアラブル端末で管理しているからアラートが発出されるまで休憩をとる必要はない」と考えるのは極めて危険で、基本的な熱中症対策はとっておくことが大前提となります。ウェアラブルデバイスはあくまでも補助的なツールとして認識し、まずは安全な作業を行えるように社内で明確なガイドラインやルールを作り、それを厳格に守っていくことが重要です。