2020年、急速に世界で拡大した新型コロナウイルスは私たちの生活を一変させました。日本国内では長期間にわたる休校措置から始まり、史上初の緊急事態宣言の発出、外出自粛生活を余儀なくされ、私生活はもちろん仕事にも大きな影響を及ぼしたという人が大半です。
長期間にわたる休校や外出自粛といった、これまでにない経験によってさまざまな問題も浮き彫りになってきました。
そこで、新型コロナウイルスに対応した新たな生活様式を実現するにあたって、スマートホームやIoTといった技術が現在注目されています。
一見関連性が低いように考えられる両者ですが、具体的にどのような活用が考えられるのかを中心に詳しく解説していきます。
目次
スマートホームとは?
スマートホームという概念はIoT技術とともに注目されるようになり、ここ数年の間にさまざまな製品やサービスが登場してきています。スマートホームの「スマート」とは、スマートフォンと同じ意味を指し、「賢い」「聡明な」といった日本語に直訳されます。
たとえば、自宅の鍵を施錠する、照明を点ける、空調の温度調節をするといった行為は日常生活に欠かせないものですが、これまではリモコンや鍵、スイッチなどを直接操作して行うのが一般的でした。
スマートホームとは、これらの行為を自動的または遠く離れた場所からでも可能にするシステムや技術のことをいいます。
その他、自宅に専用の電力モニター端末を導入し、太陽光発電システムによって自家発電を可能にしたり、消費電力量を適宜把握することができるのもスマートホームの特徴です。
感染症対策への意識の変化
新型コロナウイルスの影響によって、日本国内のみならず世界の人々はこれまでの生活様式から新たな生活様式へと変革を迫られている現状があります。
いわゆる「3密」とよばれる、密閉、密集、密接を避けることはもちろんですが、こまめな手洗いや他人との接触を極力避けることは基本中の基本といえるでしょう。
また、仕事はリモートワーク、学校の授業も遠隔授業といったように、わざわざ会社や学校に行かなくても自宅で実施できるような環境も今後整備が進んでいくと考えられています。
今回の新型コロナウイルスは、ウイルスに感染しているからといって必ずしも症状が出るものではなく、知らないうちに感染していたというケースもあります。そのため、自宅の外で感染してしまい、そのまま帰宅して無症状者が家族に感染させてしまう事例が少なくありませんでした。
このような事態を防ぐためには、家族間であっても共有するものにできるだけ触れないようにしたり、自宅の中でもこまめな手洗いや消毒をして感染を防ぐといった対策が求められるようになったのです。
また、食事やお酒を楽しむ際にも、大皿で料理を出すのではなく個別に皿に盛り付けて提供したり、お酒の回し飲みは避けるなどの対策も必要です。
スマートホームやIoTで解決できること
スマートロックやIoTは一見すると新型コロナウイルスとの関連性が低いように考えられますが、具体的にどのような問題を解決できるのでしょうか。
今回は4つの実例を挙げながら紹介します。
スマートリモコンで接触を回避
照明やエアコン、テレビなどの家電製品はリモコンを使って操作しますが、複数の人がリモコンに触れてしまうと感染の原因にもなってしまいます。日常的に使用するものだからこそ、こまめな消毒や洗浄も難しいもの。そこで、スマートリモコンや自分自身のスマートフォンからでも操作できるようなIoTシステムを導入すれば、家族が同じリモコンに触れることなく操作が可能です。
赤外線を使った一般的なリモコンで操作する家電製品であれば、わざわざ家電製品を買い換える必要もなく、スマートスピーカーと連動させて声で操作したり、スマートフォンを経由して操作したりすることが可能です。
スマートリモコンは自宅の外からでも操作が可能なため、たとえば夏の暑い日に帰宅前にエアコンをつけておけば、部屋が涼しくなるまで待つ必要もありません。
接触者を自動的に検知
AppleとGoogleは新型コロナウイルス対策として、スマートフォンを活用した接触検知アプリを開発しました。これはBluetoothの機能を活用したもので、感染が発覚した人が過去に通ったルートを遡り、その人と濃厚接触をしたと考えられるユーザーのスマートフォンに通知を行うというものです。
これも一種のIoT技術を応用したシステムで、今後日本においても導入される予定となっています。
個人情報への配慮も必要となるため、あくまでも希望者のみが利用できる前提となりますが、多くの人が導入することによってこれまでは感染者本人の記憶に頼っていたものがデータによって可視化されるようになります。
見守りカメラで子どもの様子を確認
新型コロナウイルス対策として多くの学校が休校措置をとり、なかには子ども一人を残して仕事に出ざるを得ない家庭も多かったのではないでしょうか。中学生や高校生であれば問題ないかもしれませんが、特に小学校低学年の子どもだけを残すのは不安を感じる保護者がほとんどです。
そのようなやむを得ない状況のなかでも、少しでも不安を緩和させてくれるものとしておすすめなのが、見守り用のネットワークカメラです。オンラインで自宅の様子を24時間いつでも確認でき、カメラを通じて会話ができるタイプの製品も存在します。
子どもがスマートフォンを持っていなくてもコミュニケーションが取れるため、在宅の機会が増えるなかで人気を集めています。
スマートロックで施錠忘れを防止
子どもが一人在宅している状況のなかで怖いのが、不審者の住居侵入です。たとえば子どもが外出先から帰宅した後、玄関の鍵を締め忘れてしまう可能性も考えられますが、スマートロックを取り付けていればスマートフォンから遠隔操作による施錠が可能です。
玄関の鍵を取替える必要もなく、現在ある鍵をそのままスマートロックとして利用できる製品も多いため、休校措置が長引く中でも安心して導入できるはずです。
- スマートリモコンにより接触を回避できる
- アプリを使い感染者と接触者のデータを可視化
- 見守りカメラで自宅にいる子どもの様子を確認
- スマートロックで施錠忘れを防止
ウィズコロナの時代に向けてテクノロジーが果たす役割
新型コロナウイルスは従来のインフルエンザと同様に、今後も一切の発症を抑えることは難しく、共存していく方法を模索することが現実的と考えられています。「ウィズコロナ」という言葉も登場するほど一般的な考え方として広がっており、私たちは今後新たな生活様式に対応していく必要があります。
そこで、今回紹介したようにIoTやスマートホームは大きな力を発揮し、ウィズコロナ時代に欠かせないものになっていくのではないでしょうか。新型コロナウイルスが拡大する以前は、IoTやスマートホームは生活を豊かにしてくれる技術と認識されていましたが、これからは日常生活に必要不可欠な技術となるかもしれません。