5Gを理解するうえで欠かせない「ミリ波」とは?

ミリ波とは 5G・IoT

携帯電話を含め、無線を活用するサービスにはそれぞれに対応した周波数の電波が使用されています。携帯電話に限らず、テレビやラジオ、タクシー無線、防災無線など、それぞれの用途に適した無線の周波数が存在しており、これらのサービスを提供する事業者は国から免許を取得したうえで事業を展開しているのです。

2020年3月に商用サービスが開始された5Gもそのうちのひとつ。そして、5Gに用いられている電波特性を理解するうえで欠かせないのが「ミリ波」とよばれるものです。今回の記事では、ミリ波とは何なのか、その特性や用途なども含めて詳しく解説していきます。

ミリ波とは?

ミリ波の基本情報
ミリ波とは一言で表すと「30〜300GHz帯の電波」です。電波にもさまざまな種類があり、周波数によって呼称が分かれます。

電子レンジや従来の携帯電話ネットワークなどに用いられてきた電波は30GHz以下のものがほとんどで、これらはミリ波ではなく「マイクロ波」ともよばれています。ちなみに、どこの家庭にもある電子レンジでは2.4GHz帯の電波を食物に照射することによって加熱しているのですが、電子レンジのことを英語で「マイクロオーブン」と呼ぶのはこのマイクロ波に由来しているためです。

周波数が高くなればなるほど電波の波の高さは小さくなり、反対に周波数が低くなればなるほど波の高さも大きくなります。従来多くの電子機器に利用されてきたマイクロ波は10〜数cm程度の波長ですが、30GHz以上の電波になると1〜10mm程度の波長になります。ミリ波とよばれるのはこの波長の長さが由来となっており、さらに周波数が高いものになるとサブミリ波とよばれる電波も存在します。

携帯電話ネットワークの歴史と周波数

携帯電話ネットワークの歴史
電波の基本的な内容が分かったところで、あらためて携帯電話ネットワークの歴史を振り返ってみましょう。

1G(1979〜1980年代):800MHz

まず、日本ではじめて携帯電話が登場したのは今から約40年前の1970年代にまでさかのぼります。当時は現在のようなコンパクトな電話ではなく、自動車に搭載するタイプのものが主流でした。

一般的な連絡手段として誰もが手軽に契約できるものではなく、法人向けにビジネス用ツールのひとつとして提供していたのがはじまりです。この頃は800MHzの電波が使用されており、アナログ方式による接続でサービスが提供されていました。

2G(1990年代):800MHz/1.5GHz

1990年代に主流となった2Gは1Gのアナログ方式からデジタル方式へと変革し、800MHzおよび1.5GHzの周波数帯を活用して通話だけではなくメールも利用できるようになりました。

また、NTTドコモの「iモード」に代表されるような携帯電話向けインターネットコンテンツも登場し、携帯電話としてのさまざまな活用方法が見出されるようになったのです。

3G(2000年代):800〜900MHz/1.5GHz/2GHz

2000年代に普及した3Gは800MHzから2GHz帯の幅広い周波数が活用されました。従来の2Gに比べて通信速度も向上し、携帯電話向けのインターネットコンテンツがさらに本格的に普及するフェーズとなりました。

また、携帯電話の料金プランも従量制のパケット料金から定額制で使い放題のプランが登場し、料金を気にせず楽しめるツールへと進化していったのです。

4G(2010年代):700〜800MHz/1.5GHz/1.7〜1.8GHz/2GHz/2.5GHz/3.5GHz

2010年代に登場した4Gは700MHzから3.5GHzの幅広い周波数が割り当てられ、スマートフォンのためにあったと言っても過言ではありません。それまでの携帯電話向けインターネットコンテンツといえば、携帯電話だけに最適化されたPCとは異なるものが主流でした。

しかし、スマートフォンが登場したことによって携帯電話とPCの境目はなくなり、むしろPCよりもスマートフォンでインターネットを楽しむユーザーのほうが一般的となったのです。通信速度も飛躍的に向上し、固定回線と同等の速度も実現できるようになりました。

5G(2020年代):3.5〜4.5GHz/27〜29GHz

2020年代に本格的な普及が見込まれている5Gは、3.5GHzから29GHzという高い周波数帯が活用されます。もはや通信速度が遅くて悩むことはなくなり光回線並みのスピードが当然になるほか、低遅延かつ同時他接続という特性も加わります。

これによって5Gは携帯電話向けの用途だけではなく、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの実現に向けても重要な役割を果たす技術として注目されているのです。

周波数で異なる電波の特性

周波数で異なる電波の特性

そもそも電波は周波数帯によっても特性が異なり、用途に応じて使い分けられています。そこで今回は、携帯電話用の電波として見たときに周波数帯によってどのような違いがあるのか簡単に紹介していきましょう。基本となる考え方は以下の通りです。

周波数帯が低い 周波数帯が高い
通信速度 遅い 速い
電波が届く範囲 広い 狭い

上記のうち「電波が届く範囲」とは、言い方を変えれば「障害物に強いか弱いか」ということにもなります。すなわち、高い周波数帯によって構成される5Gは、「従来の4G以前の携帯電話ネットワークよりも高速である特徴はあるものの、障害物に弱く電波が届きづらいエリアも出てくる」ということになります。

もっと分かりやすくいえば、これまでは1基の基地局を設置すれば半径2kmをカバーできていたものが、5G対応の基地局になると1.5kmや1kmといったように狭くなってしまうというイメージです。そのため、これまで展開してきた4G向けの基地局よりもさらに多くの基地局を細かく設置しなければならないことも意味しているのです。

ミリ波の用途と将来期待される役割

ミリ波の用途と将来期待される役割

5Gに使用される電波には3.5〜4.5GHzの比較的低い周波数帯のものと、27GHz以上の高い周波数帯のものがあると紹介しました。特に27GHz以上の周波数帯については、これまで携帯電話ネットワークとして活用したことのない高いレベルのものですが、これはIoT分野への活用が期待されています。

たとえば工場内で生産機器にセンサーを取り付け、異常検知などに役立てるファクトリーオートメーションという考え方があります。これを実現するために、各種センサー類とサーバを通信する際に27GHz以上の5G網を活用することが検討されています。一定のエリアや団体、企業内でのみ利用することを想定しており、通常の5Gネットワーク網とは異なる「ローカル5G」という活用方法が前提となります。

このように、5Gに活用されるミリ波は従来の携帯電話向けの用途以外にもさまざまなものが検討されており、あらゆるビジネスにおいて大きな変革がやってくると期待されているのです。