建設業界において今後期待されるIoTの活用事例と解決すべき課題

建設業界において今後期待されるIoTの活用事例 5G・IoT

現在、さまざまな分野においてIoTを活用したビジネスが検討されています。なかでも代表的なのが自動運転遠隔医療などの分野で、日本が抱えるさまざまな社会課題を解決するソリューションとして注目されている分野でもあります。

しかし、実はこれら以外にも活用事例が検討されており、あらゆる業種において産業構造そのものを変革させられるほどのインパクトを秘めています。

今回はその中から建設業界で検討されている活用事例について詳しく解説していきましょう。現在どのような課題を抱えていて、具体的にどのような方法や仕組みで問題解決を図ろうとしているのかをピックアップしてみましたので、ぜひ参考にしてみてください。

人手不足が深刻化している建設業界

人手不足が深刻化している建設業界
建設業界における就業者数は1997年度をピークに年々減少傾向にあり、実に27%もの労働者が減少している現状があります。これは民間および政府からの建設投資額が年々減少していることも大きな要因ではありますが、そもそも日本全体において少子高齢化が進んでいることも挙げられます。

かつての日本は高度経済成長期から長年にわたって建設ラッシュの時代が続き、道路やビル、橋、トンネルなどを数多く造ってきました。しかし、現在ではそのような新規建設の需要は落ち着き、老朽化した施設や構造物などのメンテナンスや補修が大きな割合を占めています。近年、毎年のように地震や台風、大雨などの大規模災害が相次ぎ、インフラ整備の意義や重要性が見直されてきたことも要因のひとつといえるでしょう。

しかし、そもそも子どもの人数が少なく、将来的に日本を担う世代が減少していくと、今の建設業界のやり方では限界を迎えてしまいます。人の数が減ったとしても、生産性や労働効率性を上げて作業に対応できる方法を検討しないと、将来はインフラの老朽化が深刻化し社会生活に大きな影響を与えると懸念されているのです。

■参考資料
建設産業の現状と過大<国土交通省>

IoTを活用した建設機械の遠隔操縦

IoTを活用した建設機械の遠隔操縦
深刻化する建設業界の人手不足に対応するために、建設機械の遠隔操縦によって効率性を高める方法が検討されています。具体的にどのような仕組みで行われるのか、それによるメリットや解決すべき課題なども含めて詳しく解説します。

建設機械の遠隔操縦の仕組み

大手通信キャリアや大手ゼネコンが共同でノウハウを持ち寄り、建設機械の遠隔操縦の実証実験を実施しています。

基本的な仕組みとしては、建設機械に超高画質のカメラやセンシングデバイスなどを設置し、それらのIoT機器から得られる情報を集約して遠隔地にある制御室へ5Gネットワークを経由して伝送。制御室には大型のモニターとコントロールデバイスがあり、作業員は実際の建設機械に座っているのと同じような感覚で建設機械を操縦できる仕組みです。

細かな振動や音なども極めてリアルに再現され、作業員はこれまでと同じような感覚で作業ができる環境が整っています。

建設機械の遠隔操縦によって得られるメリット

遠隔地でも建設機械の操縦ができるということは、作業員はわざわざ現場まで足を運ばなくても効率的に作業ができることを意味します。

たとえば午前中はAという現場で作業を行い、午後はA地点から100km離れたB地点でもアクセス先を変更するだけで作業が可能になります。建設機械を操縦できるスキルさえあれば、移動によって多くの時間を取られる必要もなくなるはずです。

いわば建設業界におけるテレワーク、リモートワークのような感覚であり、体力的に自信がない作業員であっても作業に従事できる可能性もあります。

遠隔操縦を実現するうえで解決すべき課題

建設機械の遠隔操縦を実現するためには、いくつか解決しなければならない課題もあります。もっとも重要かつ難易度が高いのが、通信環境における遅延です。

超高画質のカメラや音声データ、センシングデバイスから取得したデータなどをやり取りするためには5Gのネットワークが必要不可欠なのですが、一般的なクラウドサービスのようにインターネットを経由してデータをやり取りするとなると大幅な遅延が生じてしまうのです。

そもそも5Gには低遅延という特性がありますが、これはあくまでもアクセスポイントまでの部分に限られます。5Gの先が通常のバックボーン回線でデータを受け取るまでにインターネットを経由するとなると、低遅延のメリットを活かすことができません。通信に遅延が生じてしまうと、いざというときに建機の操作タイミングにラグが生じてしまい、最悪の場合重大な事故につながるおそれもあるのです。

そのため、5Gを経由してデータ通信をやり取りする際に安全で遅延の少ないネットワーク構成を検討しなければなりません。これを実現しようとすると、一般的なクラウドサービスのような安価な料金では実現が難しく、コスト面での課題も出てきてしまいます。

同じ敷地内または一定の範囲内でのネットワーク環境下であれば対応できるのですが、現場と本社といったように遠く離れた場所でテレワークのようなシステムを実現しようと考えたとき、決して簡単なことではありません。

建設現場の無人作業は可能になるのか?

無人作業は可能?

さまざまな課題を解決して建設機械の遠隔操縦が可能になったとしても、完全に現場から作業員がいなくなり、機械のみで現場作業が完結できるようになるにはまだまだ時間がかかるでしょう。

通信機器との設定や準備はもちろん、作業の後片付けや交通整理、万が一のトラブル対応など、人間でなければ対応できないことは多いものです。特に建設現場における作業は自動運転と同様、人の命や安全に直結する分野でもあるため、少しでも安全上の懸念がある以上は完全自動化に踏み切るには時間を要します。

しかし一方で、建設機械を自在に操ることができる腕の良い職人が1日に複数の拠点を回れることによって、作業そのものが大幅に効率化することもまた事実です。しばらくは現場の作業員がさまざまなサポートを行いつつ進めていくことになりますが、建設機械の遠隔操縦によって着実に作業の効率性や生産性は向上していくはずです。

変革していく建設現場

これまで建設現場は長年の経験によって培ってきた腕の良い職人が支えてきました。しかし、そもそもの就業人口が減少し続けている中で、これまでの方法やノウハウが通用していくとは限りません。むしろ今のタイミングで徐々に働き方や仕組みを変えていかないと、建設業界全体が深刻な問題を抱えてしまう可能性もあります。

人間による作業だけでは限界がある世界も、今回紹介したIoTや5Gといった先進のテクノロジーをうまく活用していくことによって、さまざまな社会課題が解決できるようになっていくはずです。