新型コロナウイルスによって見えてきたリモート教育の現状と解決すべき課題

リモート教育の現状と解決すべき課題 教育

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、企業ではリモートワークの導入が推進されています。人との接触を避けるためには、労働者が密集したオフィス空間での業務を避ける必要があるほか、通勤時の満員電車を避けることも重要とされています。
しかし、このような問題は社会人だけではなく、小学校から大学までの教育機関についても共通して言えることです。

世界各国では学校以外での場所でも授業が受けられるリモート教育が普及してきていますが、果たして日本国内の現状はどのようになっているのでしょうか。

今回の記事では、リモート教育の現状を紹介するとともに、自宅でリモート教育を受ける際に考えられる課題、そして本格的にリモート教育を普及させていくうえで必要なことについても詳しく解説していきます。

リモート教育の現状

リモート教育の現状

2019年2〜3月に総務省がリモート教育について調査した結果によると、全国1,815の自治体のうち、域内の一部または全部の学校でリモート教育をすでに実施している自治体は399。

今後リモート教育の実施を希望している自治体は348にのぼり、全体の約4割がリモート教育に対して前向きな姿勢を示していることが分かりました。

一方で、他の1,068の自治体はリモート教育の実施を希望していないと回答しており、自治体によっても大きな差が生じていることがうかがえます。

リモート教育の実施を希望している自治体のなかには、ノウハウがなかったりコストがかかったりといった理由によって断念しているケースも多く、さまざまなハードルがあることも分かっています。
また、自治体の中で一部の学校は導入しているものの、その他の学校についてはリモート教育の今後の導入希望がないケースもあるようです。

上記の調査は教育委員会を対象にした調査であり、自治体ごとの状況が分析された結果なのですが、さらに細かく学校ごとの状況を調べてみると教育のリアルな現状が見えてくると考えられます。

また、新型コロナウイルスの影響によって多くの学校が長期間の休校措置を取らざるを得なくなりましたが、今後このような感染症だけではなく、自然災害などによって登校できなくなるケースも十分想定されます。そのため、リモート教育の環境整備を進める学校は今後増えてくると考えられ、導入における課題を整理したうえで対策を講じなければなりません

参考資料:遠隔教育の推進について

リモート教育が抱える課題

リモート教育が抱える課題
リモート教育を実現するためには、単に教員と生徒に対してIT環境を整備すれば良いというものではありません。大きく分けて学校や自治体側が解決すべき課題と、家庭や保護者側で解決しなければならない課題があります。

学校や自治体が解決すべき課題

リモート教育は従来のように教室内で授業を行うのに比べて異なるノウハウが要求されます。たとえばオンライン環境や通信デバイス、カメラなどのツールの整備はもちろんですが、聞き取りやすい声のトーンや会話のスピードによっても生徒の理解度は変わってくるでしょう。

また、従来は黒板やホワイトボードなどを使って授業を行っていたと思いますが、単にカメラで映しただけでは文字が小さすぎて見えなくなってしまいます。

オンライン会議用のツールなどでも使用されているホワイトボード機能のようなものを使いこなすスキルも必要です。単にメモ帳のようなキーボードから文字を入力するものではなく、ペンタブレットのようなツールで手書きで自由に表現できるツールも必要になります。

生徒一人ひとりの表情を観察して理解度を推察することもあると思いますが、オンライン上できめ細かな授業を行うためには、従来のように一度に数十人を相手にコミュニケーションをとることは難しいことも想定されます。
そのため、一度に授業を行う人数を制限するなど、時間割や教員数の十分な確保も課題として考えられるでしょう。

教員個人や学校単位では解決できない課題も多いため、各自治体や国とも連携しながら課題を整理し解決に向けて行動していくことが求められます。

学校や自治体が解決すべき課題
  • 新しいノウハウの習得
  • オンライン授業に適したツール
  • 教員数の十分な確保

家庭や保護者側で解決すべき課題

授業を行う学校や教員だけではなく、授業を受ける側の生徒一人ひとりが授業に集中できる環境作りも必要です。もっとも大きな問題として予想されるのが、保護者が日中仕事で自宅にいることができないというものでしょう。
特に小学校低学年の子どもをもつ親の場合、子どもだけを自宅に残して会社に出勤するということは現実的ではありません。

子どもが授業に集中できないという問題以前に、さまざまな事件や事故に巻き込まれてしまうリスクも増大するため非常に危険です。そのため、リモート教育を本格的に普及させていくためには、まず大前提として企業側がリモートワークに対応し、子どもをもつ親を対象として徹底的に子育てをサポートする姿勢も求められるのです。

一方で、仮に保護者がリモートワークに対応できたとしても、日常的に自宅のなかで子どもが授業を行っているなかで仕事も安定的に行える環境にある家庭は一部に限られるでしょう。また、リモート教育の環境を整えるための通信回線の整備やタブレット、PCなどの端末を自前で用意するとなると高額な出費も迫られます。

家庭や保護者側が解決すべき課題
  • 保護者が自宅にいられる環境づくり
  • リモート教育の為の通信環境設備

リモート教育を普及させるためには

リモート教育の現状を見ると、日本国内において多くの学校はリモート教育が導入されておらず、本格的な普及までにはさまざまなハードルがあることが分かりました。リモート教育の導入を成功させた学校や自治体の中には、すでにリモート教育を行っている他校の成功事例を参考にしたり、ノウハウを共有してもらったりといった前向きな取り組みを積極的に実施しているところも少なくありません。

もちろん、これには学校や教員側の取り組みだけではなく、保護者への十分な説明と協力も不可欠であることは言うまでもないことです。コスト面での問題や地域の特性など、さまざまな事情があるとは思いますが、今回の新型コロナウイルスによってオンラインでのリモート教育の必要性が露呈したことは事実です。

国や自治体などが行うべきことはもちろん多いですが、子育て世代の保護者が働く企業側もテレワークや時短勤務などを積極的に導入し、リモート教育を受けやすい環境を作っていくことも求められています。