IoTのさらに先にあるもの「IoE」とは何か?

IoTのさらに先にあるもの「IoE」とは何か 5G・IoT

モノのインターネット」ともよばれるIoTはさまざまな製品、サービスが登場し活用の幅が広がっています。将来的には5GやAIなどと密接に連携しながら、自動運転や遠隔医療などのサービスも実現すると考えられていますが、実はIoTの先には「IoE」とよばれるテクノロジーが存在していることをご存知でしょうか。

今回はIoEとは何なのか、IoTとの違いも含めて詳しく解説していきます。

IoEとは

IoEとは

IoEとは「Internet of Everything」の略称です。IoEはシスコシステムズが2010年代半ばに提唱したもので、日本語に直訳すると「全てのインターネット」という意味になります。
これに対してIoTは「Internet of Things」であり、「Thing」、すなわちモノや事柄などに限定したテクノロジーを指します。スピーカーにネットワーク接続機能を搭載したスマートスピーカー、テレビや冷蔵庫、掃除機などのIoT家電、さらには電話端末にインターネット機能を搭載したという意味では、スマートフォンも身近なIoT端末であるといえるでしょう。これらに共通しているのは、いずれもモノに対してネットワーク機能を持たせたという点です。

IoTとIoEが決定的に異なるのは、IoTは特定の目的や用途に限定して利用することを前提としているのに対し、IoEの場合はより広い概念で、たとえば街づくりや国の仕組み、環境問題など極めて俯瞰した目線からテクノロジーの活用を検討するというものです。

ネットワークに接続されたモノがごく自然に存在していて、現在のようにPCやスマホといった情報端末だけではなく、公共施設や道路、店舗などがオンラインでつながったとき、真のIoE社会が到来し私たちの生活は一変すると考えられます。

IoTとの違いを理解するために必要な考え方

IoTとの違いを理解するために必要な考え方

IoTとIoE、両者は非常に似通っていて混同しがちなものです。一般的にIoTという言葉は認知度が高まってきていますが、IoEの認知度は低く、この記事を読んで初めて目にしたという方も多いことでしょう。「IoEとは」のステップでも紹介した通り、IoEはIoTが広く浸透した社会のことを指しますが、抽象的すぎて理解しにくいものです。そのような方のために、もう少し詳しく具体的に紹介しましょう。

今回はより分かりやすく説明するために、自動運転を例に解説していきます。そもそも自動運転とは、IoTやAIといった最先端テクノロジーの塊です。歩行者や対向車、さらには周囲で走行しているクルマ、障害物などを検知するためには高精細なカメラが必要であり、撮影した映像をAIで処理して適切な制御を行わなければなりません。このとき、単なるカメラではなくネットワーク機能を搭載したカメラが必要なのですが、まさにこれはIoTの概念そのものです。

しかし、将来自動運転の技術が確立し、一般のユーザーが手に入れられるようになったとしても、ある日突然すべてのクルマが自動運転機能を搭載したクルマに置き換わるものではありません。当然のことながら従来の手動運転車と自動運転車が混在することになります。ここで問題となるのが、手動運転車と自動運転車のコミュニケーションの問題です。たとえば信号のない交差点で双方のクルマが止まった場合、どちらが先に発進するかをコミュニケーションしながら調整しなければなりません。

仮に双方が自動運転車であればスムーズに自動的に調整が可能になるのですが、手動運転車と自動運転車の場合は双方の意思を確認する手段を用意しておく必要があります。

このように、IoTというテクノロジーが発達しても、それが社会全体ではなく一部のユーザーや自治体、企業内だけで活用されていると、真の価値を発揮することも難しくなります。IoTを誰もが手軽に利用できる身近な存在として社会実装することで、初めてその力を活かせるようになるのです。

今回の例に沿って紹介するならば、IoTは自動運転に対応したクルマであり、IoEは自動運転のクルマが一般的となった社会そのものを指す概念と考えると分かりやすいのではないでしょうか。

IoE社会の実現に向けた課題

IoE社会の概念や基本的な内容について紹介してきましたが、このような社会を作るうえで解決しなければならない問題や課題も当然あります。どのような事柄が考えられるのか、いくつかのポイントをピックアップしてご紹介します。

法的な整備

先ほどIoEの例として紹介した自動運転技術が典型的ですが、IoEが実現した場合、現在の法律では対応しきれない問題が生じるケースが出てきます。たとえば自動運転車と人間が運転するクルマが事故を起こした場合、保険適用はどのような基準で判断するのか、刑事責任の所在も明確にしておく必要があります。

また、自動車免許制度の改正や税制面の見直し、道路標識やネットワークの整備なども進めていく必要も出てくることでしょう。現在、一部の自動車には高速道路上での半自動運転を可能にする技術が搭載されていますが、将来的には人間が運転席に座らなくても、完全自動運転を目指す動きもあります。そのような未来を見据えて、成熟したIoE社会を実現するうえで法的な問題の解決および整備は避けられないものといえるでしょう。

デジタル化に対しての心理的な抵抗

IoE社会が到来すると、その人が欲しい情報などもコンピュータが予測し自動的に提供することができるようになります。しかし、これは便利な機能であると感じる人がいる一方で、「つねに監視されているのではないか」「気持ち悪い」と考える人も多く、心理的な抵抗を完全に払拭することは難しいものです。

IoTやAIといった内部のシステムに詳しいエンジニアや、その仕組みを正しく理解している人であればこのような抵抗を感じる人は少ないかもしれませんが、デジタルに弱く、難しいことはよく分からないという人にとっては不安に感じてしまうものです。現在のスマートフォンのように多くの人にとって不可欠なツールとして定着させるためには、プライバシーはしっかりと守られ安心して利用できるものであることを正しく認知させていく努力が必要です。

セキュリティ

そもそも最新のテクノロジーに対して心理的な抵抗を生む要因を深堀りしていくと、セキュリティの問題に行き着きます。高度な技術であり、一見便利に見えるものだからこそ「その裏には落とし穴があるのではないか」「個人情報が漏れるのではないか」といった懸念が生じます。

PCやスマートフォンといった情報端末であっても、セキュリティリスクを完全に払拭することはできていません。IoE社会が到来したとき、ネットワークに接続されるものが一気に拡大することでさらにセキュリティリスクも高くなるのではないかと考えるのが当然のことです。そのような人々の不安を払拭するためにも、万全のセキュリティ対策を講じることは社会実装を実現するための最低限の条件といえるでしょう。

IoE社会の実現に向けた課題
  • 法的な整備
  • デジタル化に対しての心理的な抵抗
  • 万全のセキュリティ対策

IoEは実現するのか

今回紹介してきたIoEを総括して一言にまとめるとすれば、IoEとは「IoT社会が実現した世界」といえるでしょう。私たちの生活に欠かせないモノや仕組みがIoT化され、それらが広く社会に広まっていったとき、ゴールの姿がIoEであると表現すると分かりやすいと思います。

IoTが社会実装されIoEの社会を実現するためには、今回ピックアップしてきた問題以外にもさまざまな懸念や解決すべき課題があります。しかし、現在多くの国や自治体、企業で最先端のテクノロジーが活用されており、実用化に向けての取り組みが行われています。

言い方を変えれば、私たち人類は現在、IoE社会に向けて一歩一歩着実に前進している状況でもあるのです。