Society5.0とは?テクノロジーによって社会はどう変わる?

Society5.0

5Gを含むさまざまなテクノロジーが進化しているなか、現在日本国内で政府が主導している「Society5.0」という政策があります。あまり聞き慣れない言葉のため何を意味しているのか分からない人も多いと思います。そこで今回は、そもそもSociety5.0とは何なのか、何を目指し、具体的にどのような社会がやってくるのかについても詳しく紹介していきます。

Society5.0とは

Society5.0とは
Society5.0という言葉が登場したのは2016年までさかのぼります。科学技術基本法とよばれる法律が5年おきに改定されていますが、2016年から2020年までの5年間におけるキャッチコピーとして生まれました。Society5.0は「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されています。
しかし、この言葉だけを聞いてもなかなかピンとこない人も多いのではないでしょうか。そもそもSociety5.0の「5.0」とは何を指しているのかを考えるとその意味が徐々に分かってきます。
Society1.0から4.0は人類がこれまで歩んできた歴史そのものを表しています。

Society1.0から4.0
  1. Society1.0=狩猟社会
  2. Society2.0=農耕社会
  3. Society3.0=工業社会
  4. Society4.0=情報社会

上記のように表現されます。これまでの情報社会とは、人間が仕事や作業を効率化するために情報を活用するというものでした。たとえばインターネットを使って情報を収集して資料を作成する、メールやチャットを使って離れた場所にいる従業員や取引先、顧客とコミュニケーションをするといったことが代表的です。これは仕事という枠に限らず、私たちの普段の生活にも共通して言えることでもあります。

これまでの情報社会は人間が必要な情報を取りに行っていました。それだけでも十分私たちの生活は豊かであったといえますが、これからのSociety5.0の社会は情報を取りに行くまでもなく、すでに存在し、機械やロボットがあらゆる情報を活用しながら自律的に動いているという社会がやってきます。

Society5.0で変わる社会

Society5.0が実現すると社会はどのように変わっていくのか、もう少し具体的に紹介します。政府はSociety5.0の実現によって大きく4つのポイントが変革すると紹介しています。

新たな価値が生まれる

これまでの社会は情報化が進んだとはいえ、さまざまな知識や情報が断片的に点在しているような社会でした。そのため、事前にある程度の知識や知見がないと正しい情報を組み合わせて課題を解決することができず、連携が不十分であることも多かったはずです。

たとえばインターネットを活用することはできても、QRコード決済の利用方法やSNSの使い方がよく分からないといった高齢者も少なくありません。Society5.0の社会がやってくると、自分の情報を登録しておけばあらゆるサービスや決済を一元的に利用することもできます。

多様なニーズに対応できる

これまで先進的な技術は都市部から広がり、地方でその恩恵を受けられるのはしばらく時間が経った後になるケースは少なくありませんでした。高速インターネットの光回線や4Gの普及などはその顕著な例として挙げられますが、Society5.0はこのような地方と都市部の格差も解消してくれる可能性があります。

また、これまでのような複雑な操作を必要としないAIスピーカーのようなテクノロジーによって、高齢者と若者の情報格差も是正されていくでしょう。都市部から地方、そして若者から高齢者まで、あらゆるニーズに対応できる社会がSociety5.0によって実現されます。

必要な情報が必要なときに提供される

情報化社会によって物理的な距離の問題は解消され、あらゆる情報が瞬時に手に入れられるようになりました。しかし同時に、情報が溢れすぎて本当にほしい情報をほしい時に手に入れられないといった問題を抱える人を生み出す結果にもなりました。情報を正しく収集できるスキル、デバイスを使いこなせるスキルなど、さまざまなリテラシーが要求されます。

しかし、Society5.0が実現したとき、AIやIoT、5Gなどの技術によって誰でも簡単に情報が収集できるようになります。リテラシーに関係なく必要な情報が瞬時に手に入れられ、情報格差はなくなっていきます。

人の可能性が広がる

加齢によって肉体的な能力が衰えてきたとき、仕事に限界を感じて辞めてしまう人も少なくありません。また、認知機能の低下によって自動車やバイクなどの運転も難しくなり、行動範囲も徐々に狭まっていきます。

Society5.0が実現すると、たとえばロボットが人間のサポートを行って少ない力で重いものを持ち上げたり、自動運転によって自動車の運転が難しい人でも手軽に出かけられるようになるでしょう。近年問題となっている高齢ドライバーによる痛ましい事故も減ってくると期待されています。

Society5.0の具体的事例

Society5.0の具体的事例
Society5.0を紹介すると抽象的な表現が多くなってしまいがちで、イメージが湧かないという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、具体的な事例として3つのケースをピックアップして紹介します。

自動運転

もっとも身近で分かりやすい事例として挙げられるのが自動運転です。目的地を案内するシステムとしてカーナビゲーションは一般的な存在となりましたが、あくまでもカーナビゲーションは人間の運転をサポートする役割に過ぎません。Society5.0の時代では、人間が運転をしたりサポートしたりすることがなく、完全に運転が自動化されることになります。

完全自動運転を実現するためにはAIやIoT、その他通信技術などの発展も欠かせませんが、それと同時に法規制の問題もクリアしなければなりません。事故を起こした場合の責任の所在や制限速度の見直しに至るまで、残されている課題は多い現状があります。

遠隔医療

深刻な高齢化が進む地方自治体も多く、高齢化に悩む自治体ほど医療機関や医師が不足している現状があります。すべての国民が均等に適切な診察が受けられる環境とはいえず、大きな社会問題となっています。

5Gによる超低遅延環境のもとで高度な医療ロボットを操作し、遠く離れた地方でも手術が受けられる遠隔医療の技術が研究されており、これはSociety5.0の時代を象徴する事例ともいえます。

ロボットによる介護

「サイバー空間とフィジカル空間の融合」を目指すSociety5.0ですが、その究極の姿ともいえるのがロボットによる介護です。「ロボット=サイバー空間」という枠組みで捉えるのではなく、現実社会のなかでごく普通に人間とロボットが共存できる社会が到来したとき、本当の意味でSociety5.0の社会がやってきたと実感する人も多いはずです。

ロボットの動きを制御するAIに「人の優しさ」のような感情を与え、人間と同じようにコミュニケーションができる未来はもう少し先になりそうですが、介護士が肉体的負担を軽減させるためのロボットは徐々に実用化に向けて動き出しています。これは介護士が身につけるスーツ型のロボットで、腰や腕などにかかる負担を軽減させてくれる効果があります。

スーツ型のロボットは介護以外にも物流の現場などに応用でき、肉体的負担の大きい作業全般に高い効果を発揮します。加齢による肉体の衰えによって仕事を離れるケースは多いですが、このようなロボットを活用することで年齢を重ねても活躍できる社会が到来するかもしれません。