MaaSとは?活用事例と注目されるようになった理由も解説

MaaSとは?

近年、テクノロジーの発展とともにMaaSという言葉が注目されるようになってきました。SaaSをはじめとして「as a Service」の概念は一般化しつつありますが、数が増えすぎて何を意味する言葉なのか分からないという人も増えていることでしょう。
MaaSはそのなかでも最たる例であり、なんとなく自動車に関連する技術とは分かっていても、その本質を正しく理解している人は意外と少ないです。

そこで今回の記事では、そもそもMaaSとはどのような概念なのかを詳しく紹介するとともに、MaaSによって具体的に何がどう変わるのか、具体的な事例も含めて解説していきます。
最新のテクノロジーをインプットしておきたいという人はもちろん、新たなビジネスにつながるアイデアを勉強したい方もぜひ最後までお読みいただき参考にしてみてください。

MaaSとは?

MaaSの基本情報
MaaS(マース)とは「Mobility as a Service」の略称です。モビリティとは自動車や電車をはじめとして、人間の移動手段に関わる全般を指します。すなわちMaaSとは、「ITの力を活用して交通手段を変革するための技術やサービス」を総称する言葉といえるでしょう。

最近ではAIや5Gなどの先進的な技術を活用する自動運転技術が注目されていますが、もちろんこれもMaaSのひとつに数えられます。また、MaaSは自動運転のような極めて高度なものではなくても、タクシーの配車をシステム化してスマホアプリとして提供したり、スマホアプリと連携したフードデリバリーシステムを提供したりすることもMaaSです。

ITの力を使いながら、交通手段にかかわる既存のシステムを効率化することによって生産性や移動効率が向上していきます。このように、MaaSは特定の技術や仕組みを表す言葉というよりは、移動手段、交通手段といった幅広い枠組みで使われるワードであると考えて問題ありません。

MaaSが注目されるようになった理由

MaaSが注目されるようになった理由
MaaSという言葉が登場してきたのはここ数年の間であり、決して古くから使われていた言葉ではありません。移動手段や交通システムにITの力を活用したものはこれまでも存在していましたが、なぜここ最近になってMaaSという言葉が登場し、注目されるようになってきたのでしょうか。

その背景には、先進的なテクノロジーの進化とデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現が求められる社会全体の変化が挙げられます。

テクノロジーの進化

MaaSは特定の技術やシステムを指す言葉ではなく、さまざまな技術を複合的に組み合わせて実現するのが一般的です。たとえばすでに都市部で提供されているフードデリバリーの「Uber Eats」は、専用のスマホアプリで料理をオーダーするとオンラインで決済され、配達者の位置情報をスマホアプリ上で追うことができます。今どの道を走っているのかがマップ上に表示されるため、何時頃の到着になるのかがリアルタイムで分かるようになっています。

これはスマートフォンの位置情報を活用しているのですが、当然のことながらスマートフォンがここまで普及していなければUber Eatsのようなサービスは成立していなかったのは言うまでもありません。

Uber Eatsの例はもっとも身近で分かりやすいですが、自動運転やカーシェアリングサービスなどもさまざまなテクノロジーがなければ実現が難しいものです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が多くの企業で注目されるようになってきました。そもそもデジタルトランスフォーメーションとは、デジタルテクノロジーの力を活用して革新的なサービスや製品を生み出したり、経営そのものを変革していこうというもの。これまでの常識にとらわれず、まったく新しい視点からあらゆる可能性を考え、ビジネスに活かしていくという考え方です。

たとえば自動車業界であれば、「自動車=人間が運転するもの」という常識を覆す自動運転技術の開発がデジタルトランスフォーメーションの本丸であると考えることもできるでしょう。移動手段、交通手段という枠組みで考えたとき、多くの業種においては少なからず関係してくるポイントがあるはずです。

たとえば飲食業界の場合は食材の調達のための物流コスト、アパレル業界も原材料の仕入れや商品を店舗まで運ぶための物流網など、物理的にモノを運ぶための手段という意味ではMaaSは切っても切り離せない問題です。

仮に物流網がなくてもビジネスが成立するという業種であっても、新たなビジネス領域としてMaaSは注目する価値の高いものです。デジタルテクノロジーを活用してMaaS関連のビジネスのアイデアが浮かんでくれば、自社にとって大きなビジネスチャンスにつながる可能性は大きいです。まさしくそれこそがデジタルトランスフォーメーションの実現でもあるのです。

MaaSによって何が変わるのか?

MaaSによって何が変わるのか?
MaaSによって新たなビジネスが登場してくると、人やモノの移動に関連することが大きく変革すると考えられます。

交通手段の変化

MaaSのなかでも象徴的な自動運転技術が実現すると、多くの人が日常的に利用している交通システムも大きく変化すると考えられます。交通事故はもちろん慢性的な交通渋滞も減り、目的地までスムーズな移動が可能になるでしょう。電車や自動車といった乗り物の概念自体も変化する可能性があり、まったく新しい形態の乗り物が登場する可能性もあります。

物流の仕組みの変化

慢性的な人手不足の問題を抱えている物流業界においても、MaaSはビジネスを革新すると期待されています。最適な配達ルートの選定や自動運転技術の活用、さらにはドローンを活用した配達が可能になると、現在物流業界が抱えている人手不足の問題も一気に解決すると考えられます。

自動運転やドローンなどは今すぐに実用化できるものではなく、法整備などの問題もありますが、少なくとも一般ユーザー向けにサービスが提供される前に産業向け用途として利用される可能性が高いと言われています。

生産性の向上

MaaSによって人の移動が最適化されると、現在のように満員電車で体力を消耗したり、移動のたびにストレスを抱えることも少なくなるはずです。会社で働く人にとっては仕事以外の場面で無駄な体力を削ぎ落とすこともなくなり、働くうえでのモチベーションアップにもつながると期待できるでしょう。その結果、生産性の向上にもつながると考えられます。

MaaSの事例

MaaSの事例
MaaSはまだまだ新しい技術で事例も少ないですが、そのなかでもいくつか代表的な事例を紹介していきましょう。今回は海外での事例と国内での事例に分けて紹介します。

海外での事例

海外ではライドシェアのサービスが一般化してきており、従来のタクシーだけではなく一般のドライバーがタクシーのようなサービスを展開しています。日本ではいわゆる「白タク」とみなされてしまいますが、海外では規制緩和により浸透しています。

また、ヨーロッパや中国ではシェアサイクルといって自転車の共用サービスが展開されています。一定の時間を決めて料金を支払い、街のあちこちに設けられた専用の自転車置場に乗り捨てできるようなサービスです。日本でも一部地域でシェアサイクルのサービスは展開されていますが、海外では日本以上に一般的で身近なサービスになりつつあります。

日本国内での事例

日本国内でのMaaSの事例といえば、なんといってもフードデリバリーサービスの「Uber Eats」が挙げられます。首都圏はもちろん、大阪や名古屋、福岡などの大都市でも徐々にエリアが拡大しており、多くのユーザーから支持を獲得しています。通常の出前サービスを展開していないお店であっても、Uber Eatsであればデリバリーに対応しているというケースも多く、バラエティに富んだ内容で選ぶ楽しさがあります。

また、2019年にトヨタとソフトバンクが共同で設立した「MONET」という会社もMaaSの象徴として挙げられるケースが多いです。自動車の巨人であるトヨタとITの巨人であるソフトバンクが手を組んだことにより、全国の自治体も含めて多様なサービスが展開されると期待されています。具体的には企業向けの自動運転バスの提供や、オンデマンドモビリティサービスという過疎地域などにおける交通手段の構築を目指しています。

社会構造を変革するMaaS

今回は基本的なMaaSの内容を中心に紹介してきました。もちろん、今回紹介した以外にもさまざまなMaaSの活用事例があり、今後本格的にビジネスへの活用が検討されていくことでしょう。MaaSは単に新たな製品やサービスを生むだけではなく、社会構造全体を変革していくほどの力が秘められているといっても過言ではありません。

新たなビジネスチャンスを発見するためにも、今後MaaSに関連するテクノロジーや業界の動向を常にチェックしていきましょう。