AIやIoTといった次世代のテクノロジーが台頭してくるなかで、同列に語られることが多い「ビッグデータ」というものがあります。なんとなくイメージは分かるものの、なぜビッグデータが重視されるのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、そもそもビッグデータとは何なのか、AIやIoTとどのような関係性があり、なぜそこまで重要なのかという点について詳しく解説していきます。
これからテクノロジーを活用したビジネスを展開しようとしている人はもちろん、AIやIoTを活用して生産性向上に役立てていきたいと考えている方もぜひ最後までお読みいただき、参考にしてみてください。
目次
ビッグデータとは
そもそもビッグデータとは、その名の通り「膨大なデータ群」のことを指します。ただし、単にボリュームが大きいというだけではなく、さまざまな種類、発生頻度が高いデータほど重要とされます。これら3つの要素を示す「Volume」、「Variety」、「Velocity」を兼ね備えることで、ビッグデータの真の価値が発揮されると考えられています。
ただし、開発するシステムや用途によっては必ずしもこれらの要素が必要不可欠というものでもなく、あくまでもビッグデータに関する一般的な指標として扱われる要素に過ぎません。当然のことながら収集するビッグデータの量が多ければ多いほどシステムの精度は高まっていきますが、厳密に「この要素を兼ね備えたものがビッグデータである」と一概に定義できるものではないのが現状です。
ビッグデータとIoTの関係
ビッグデータはIoTを活用したシステム開発などに必要不可欠な存在です。IoTの役割はさまざまなデバイスやセンサーによってデータを収集し活用するものであり、無数のIoT端末やセンサーによって収集されたデータはビッグデータとよばれることが多いです。
たとえば気温や湿度、照度などの環境データをはじめとして、人を検知する人感センサーによって得られるデータ、マイクで拾った音のデータなど、さまざまな種類のビッグデータが挙げられます。IoTを活用することによって、普段は人間が近付けないような場所のデータを取得したり、常時環境の変化を監視できたりといったシステムを構築できるようにもなります。
極端に言えばIoTとはビッグデータを収集するための技術といっても過言ではなく、そこからさらに発展させてさまざまなデバイスをリモートで操作するといったシステムにも応用できるようになります。IoTを活用したデバイスは私たちの身近なところにも登場しており、スマートウォッチなどのウェアラブル端末は典型的な事例といえるでしょう。
スマートウォッチでは歩数や脈拍、睡眠データなどを常時収集しており、データはクラウド上に保存されます。このようなヘルスケアデータを365日常に収集することで、ビッグデータとなりさまざまな健康管理に活かすことができます。
AIにも欠かせないビッグデータ
IoTによって膨大なビッグデータが収集できることは分かりましたが、単にデータを収集しただけでは何の役にもたちません。そのデータを使って何を分析するのか、何に活用するのかがもっとも重要といえるでしょう。そこで活躍するのがAIです。人工知能であるAIは、膨大なビッグデータを解析してその傾向を瞬時に割り出すことができます。
人間に例えると、IoTはビッグデータを収集するための手足、または道具に相当する部分といえます。IoTによって得られたビッグデータという素材を見極め、分析するのはAIという頭脳に相当する部分といえるでしょう。ただし、優秀なAIであってもビッグデータを使ってどのようなシステムを構築すれば価値が生み出せるのかといったアイデアを考えることまではできません。
AIは人間よりも高度な計算や分析は得意としていますが、いわゆる「0から1を生み出すためのアイデア」は苦手です。そのため、AIやIoT、ビッグデータなどは高度なテクノロジーであることに間違いはありませんが、それを活かして有益なシステムを開発できるか否かはあくまでも開発者側のアイデアにかかっているといえるでしょう。
ビッグデータの活用事例
ビッグデータとは何なのかを一通り紹介してきましたが、漠然とした話題が多かったためピンときていない人も多いかもしれません。そこで、ここからはビッグデータを活用した事例をいくつか紹介していきましょう。
犯罪データの蓄積と防犯への活用
アメリカ国内の50以上の警察では、過去に発生した犯罪の内容や場所、その他あらゆるデータをビッグデータとして集約し、犯罪が起こりやすい日時や場所などを推定するシステムを採用。「プレッドポル」とよばれるこのシステムは、一帯のエリアを色別に記載し、一目で危険度が分かるようにしています。
ビッグデータの解析にはAIを活用し、その内容をつねに一般市民に公開。その日に犯罪の発生する危険性が高いエリアへの立ち寄りが減少し犯罪件数が減ったほか、警察官のパトロールも効率化されることとなりました。
ちなみに、プレッドポルを導入したロサンゼルスではベテランの捜査官とプレッドポルの精度を比較したところ、プレッドポルのほうが2倍もの的中率を誇ったという結果も出ています。
ECサイトのレコメンド機能
Amazonや楽天市場などのECサイトでは、商品を検索して閲覧した際に「おすすめ商品」という項目が出てきます。じつはこれもビッグデータを活用した機能のひとつ。
ECサイトには多くのユーザーの年齢や住所などがあり、どのユーザーがどのような商品を購入しているのかが分かります。このようなビッグデータを活用し、どの年齢層にどのような商品をアプローチすれば効果的であるのかが分析され、その結果として「おすすめ商品」に表示されるという仕組みです。
このような機能は「レコメンド機能」とよばれ、ECサイトに限らずYouTubeなどの動画サイトや検索サイト、ニュースサイトなど、インターネット上のあらゆるサイトで活用されています。
ビッグデータで変わる未来
今回紹介してきたように、ビッグデータはそれ自体で何かができるというものではなく、あくまでもIoTやAIなどの技術を併用することによって価値を生むものです。このような最先端のテクノロジーは万能で何でも実現できるというイメージを持つ人も少なくありませんが、いくら優秀なAIに膨大なビッグデータを処理させたとしても、0から1を生み出すアイデアは生まれてきません。コンピュータは人間の計算能力や処理能力を拡張することは得意ですが、創造力をもってアイデアを生み出すことは人間だからこそ可能な行為です。
人間のアイデアとAIの処理能力、さらにはIoTによって収集されるビッグデータをうまく活用していくことで、革新的なサービスや商品が生まれてくると期待されます。