多くの企業から注目を集めているAIは、今や雑誌や新聞、テレビなどのメディアでは目にしない日はないほど一般的な言葉となりました。ドラマや映画でも数多く取り上げられていることから、人間型ロボットの頭脳のような役割を果たすものと考えている人も少なくありません。
発達したAIによって人間の仕事は奪われ、やがて人々の平穏な生活まで奪っていくのではないかといったストーリーで語られることも多いAI。しかし、果たしてそのようなイメージは正しいのでしょうか。
今回は、そもそもAIとはどのような技術なのか、基本的な仕組みを紹介するとともに、これまでの歴史と将来性も含めて解説していきます。これから新たにAIをつかったビジネスを検討している方はもちろん、AIに興味がある方もぜひ参考にしてみてください。
目次
AIとは人工知能のこと
そもそもAIとは「Artificial Intelligence」の略称であり、人工知能と直訳されます。
その名が示す通り、多くの人はAIのことを「人間の頭脳が機械化されたようなもの」、「ロボットの頭脳」というように理解していると思います。これらはある意味正しいのですが、実はAIは厳密な定義が定まっていないというのが実情です。日本国内にはさまざまな大学でAIの研究が行われているのですが、研究者のなかでもさまざまな意見があり、一概に何をもってAIと定義するのか断定することは難しいです。
たとえば「人間のように気付くことができるコンピュータ」と定義する研究者もいれば、「人間の知能を超えて初めて人工知能と呼べる」という意見、はたまた「知能の定義が明確ではないため、人工知能の定義も難しい」という意見もあります。そのため、たとえば新たに開発した製品にAIの技術が活用されていたとしても、見方によっては「それはAIではない」という意見をもつ人が出てくることも少なくありません。
AIは古くから存在していた
AIは近年になって登場した新しい技術や概念ではなく、実はコンピュータが登場した時代から開発が行われ、ブームと衰退を繰り返してきた歴史があります。
1960年代に起こった第一次ブームでは、さまざまな推論によって課題を解決する仕組みが確立されました。ここで言う課題とは明確なルールや定義のあるもので、たとえばパズルのピースを完成させるなどの内容が典型的な例として挙げられます。当時はこれを応用して実用的な分野に活用できるのではないかといった期待がされましたが、あまりにも複雑な計算や処理には対応できないことが発覚し、AIに対する失望感からブームは衰退の一途をたどりました。
AIの第二次ブームとなった1980年代は、エキスパートシステムとよばれるものが注目をあつめました。これは専門家による豊富な知見をコンピュータに覚えさせ、特定分野に活かすというものです。いわば高度な知識や知見を人間に頼ることなくコンピュータで実現しようというもの。
しかし、エキスパートシステムには致命的な問題がありました。それは、人間が本来もっている常識が備わっていないということ。ある課題を解決しようとしたとき、人間であれば当然分かっているような事柄もAIではプログラミングされていないため分からなかったのです。
このような状態からエキスパートシステムを実用化しようとすると、広辞苑に載っているような世の中の一般常識をひとつずつプログラミングさせていかなくてはなりません。このような作業を人の手で行おうとすると途方もない時間と労力が必要とされ、実用化においては現実的ではありません。そのため、AIの第二次ブームも徐々に衰退していってしまいました。
そして現在、AIは第三次ブームを迎えています。そもそも今のAIブームが起こった裏には、ディープラーニングとよばれる機械学習の手法が台頭してきたことと、ビッグデータの技術活用が進んできたことがあります。機械学習とはその名の通りコンピュータが自ら学習する仕組みで、人間がプログラミングを行うエキスパートシステムとは決定的に異なります。
AIの基本「機械学習」とは
AIを語るうえで欠かせないのが機械学習です。機械学習とはその名の通りコンピュータに物事を学習させる技術ですが、主に「教師あり学習」、「教師なし学習」、そして「強化学習」とよばれる方法があります。
ここで言う「教師」とは学習のもとになるデータを表します。すなわち、教師なし学習とは過去のデータをベースにしながら正解データを割り出すというもの。一方で教師なし学習の場合は、正解データがないなかでコンピュータがデータの特徴を割り出しグループ化などを行います。
そして強化学習とは、コンピュータに問題やルールを与えたうえで学習を繰り返し実行させ、結果の精度をどんどん向上していくような学習方法を指します。現在のAIブームのきっかけとなった機械学習の一種である「ディープラーニング」も強化学習の一種で、囲碁でプロ棋士に勝利したアルファ碁も強化学習を繰り返して完成しました。
強いAIと弱いAI
AIと聞いたとき、人によって抱くイメージはそれぞれ異なります。ここで重要になるワードが、「強いAI」と「弱いAI」です。それぞれ何が違うのか、基本的な定義から特徴まで詳しく見ていきましょう。
強いAI
強いAIとは別名「汎用型人工知能」ともよばれます。
たとえばアニメや映画などで意思をもった人間のようなロボットが描かれることがありますが、まさにこのようなロボットに搭載されている人工知能が強いAIです。
何かひとつの機能や分野に特化したものではなく、人間の脳をそのまま移植したりコンピュータで精巧に再現したようなものが強いAIの特徴です。
強いAIを実現しようとするためには、私たちの世界に存在するあらゆる事柄をロボットが理解しなければなりません。子どもが言葉を覚えて五感をフル活用しながらさまざまな知識を得ていくのと同様に、ロボットも学習していく必要があります。
しかし、そのような事柄を実現できる技術はいまのところ存在しておらず、したがって「強いAI」という言葉や概念はあるものの、それが現実の世界に誕生するにはまだまだ時間を要します。
弱いAI
強いAIの対極にあるのが弱いAIです。弱いAIは「特化型人工知能」とよばれ、これはその名の通り特定の目的や役割のために誕生したAIです。
2016年に囲碁でプロ棋士に勝利した「アルファ碁」も弱いAI(=特化型人工知能)のひとつです。弱いAIを実現するためには特定の役割を実現するための学習を繰り返せば良いため、現在多くの研究者や開発者はこの弱いAIを前提に技術開発を行っています。
ちなみに、スマートフォンやAIスピーカーに搭載されている音声アシスタントは自然と人間と会話できているように思えますが、じつはこれも事前に想定される質問や回答などをパターン化し、さらに音声認識の仕組みを応用しながら作られているものにすぎません。
AIの代表的な機能
AIによって実現される製品やシステムはさまざまなものがありますが、それらの多くはAIによって得られる機能を組み合わせて作られています。なかでも代表的な機能を3つご紹介しましょう。
画像認識
画像認識はカメラに映った映像を読み取り、それが何なのかを認識するための機能です。
ゾウが映ればAIがゾウと認識し、キリンが映ればキリンと認識してくれます。画像認識AIはこれまで学習してきた膨大な画像データをもとにAIが瞬時に答えを割り出す仕組みのため、AIが見たこともない画像が出てくるとそれが何なのか認識することができません。
人間の体の一部に例えるとすれば、画像認識は目にあたる部分と考えると分かりやすいかもしれません。
音声認識
音声認識は人間の声を聞いて何の言葉を発しているのか聞き取る機能です。
人間に例えると耳にあたる機能のため、たとえば事前に登録された家族の声をもとに声の主を聞き分けたり、音をトリガーにする何らかのシステムを構築する際にも音声認識AIは役立ちます。ここで誤解しやすいポイントとしては、音声認識はあくまでも「耳」の役割を果たすものであり、言葉の意味そのものを理解したり返答したりといった機能を司るものではないということです。
自然言語処理
音声認識で得た情報をもとに言葉の意味を理解したり、それに対する応答を司るのが自然言語処理とよばれる機能です。
音声認識が耳に相当する機能だとすると、自然言語処理は会話時における人間の脳に相当する部分といえるでしょう。そのため、AIスピーカーやスマートフォンの音声アシスタントなどに活用されているAI技術の中心となっているのが自然言語処理機能といっても過言ではありません。
AIの活用事例
AIにはさまざまな機能があることがわかりましたが、実際に身近な事例としてAIはどのようなものに活用されているのでしょうか。今回は代表的な3つの事例をご紹介します。
自動運転
多くの自動車メーカーが実用化に向けて開発している自動運転技術は、高度なAI技術が活用されます。なかでも重要なのが画像認識です。車線位置や周囲の車の状況、路面の状況など、あらゆる映像からAIが総合的に判断して適切な制御を行います。自動運転はAIの技術なしには実現できないといっても過言ではなく、安全性を担保するうえでもっとも重要なポイントといえます。
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音声アシスタント
自然言語処理でもご紹介した音声アシスタントは、現在もっとも活用されているAIデバイスといえるでしょう。AppleのSiri、GoogleのGoogleアシスタント、AmazonのAlexaなどが代表的な音声アシスタントです。
人の声を理解し会話を成立させるだけではなく、過去にその人が発した言葉を覚えて自然な会話を実現するのも音声アシスタントの大きな特徴です。会話をすればするほどユーザーの特徴を理解し、ストレスなく会話が楽しめるようになります。
スマート家電
さまざまな家電製品にもAIは続々と搭載されはじめています。たとえば冷蔵庫にあるものを自動的に認識し、賞味期限の案内やレシピの提案などを行ってくれる機能や、視聴している番組の傾向をAIが学習して自動的に嗜好に合わせた番組を録画してくれるテレビなどが代表的です。
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「AIによって人間の仕事はなくなる」は本当?
AIによって仕事が奪われるのではないかという懸念が広がっており、脅威に感じている人も多いことでしょう。たしかにRPAをはじめとしてAIの活用範囲は広がっており、単純作業はAIによって自動化されるのも時間の問題であることは間違いありません。しかし、これはある意味私たち人類が辿ってきた歴史でもあります。
これまで機械化、自動化によって失われてきた仕事は多いですが、それ以上に新たに登場した仕事があります。システムエンジニアやプログラマ、その他IT関連の職種の多くはそれまで存在すらしていなかったものです。これと同様に、AI専門のエンジニアやオペレーターが今後台頭してくる可能性は大いにあります。
AIと聞くと悲観的な考えになってしまう人も多いですが、新たな時代を迎えたときに何が求められるのかを常に考えてみると進むべき道も見えてくるのかもしれません。